理事長ブログ

後見人3部作、その2 周辺関係者(??)コラム 

こんにちは。行政書士の手続寿留子です。先日の続きです。

 

お義父さんの財産なら私たち家族でちゃんと管理してるんだから心配いらないわ、と思ったアナタ、なぜ甘いかなんとなくお分かりになりましたでしょうか。

 

そうです。相続の時に問題になるのです。

 

ここで、事例でご説明致しましょう。

 

おじいちゃん(Gさん)、お父さん(Tさん)、お母さん(Kさん)、高校生の孫娘(Mさん)からなる一家があり、おじいちゃんの持家で一緒に暮らしています。

おじいちゃんはお父さんの実父です。お父さんには、2歳下の弟(Oさん)が居ます。弟にはお嫁さん(Yさん)が居ます。弟夫婦は隣の県の、別の家で暮らしています。

 

Gさん一家は仲睦まじく暮らしており、TさんとOさん兄弟の仲も良好で、相続問題なんて発生する訳がないと、みんな信じきっていました。

しかし、Gさんが認知症になって、事態は変わります。

専業主婦のKさんが主に自宅で介護をしてきましたが、昼夜を問わず徘徊するGさんから片時も目を離すことが出来ず、交代で介護して来たKさんもTさんも憔悴しきっていました。

 

そんなKさんとTさんを神様は見てくれていました。

なんと、1千万円の宝くじが当たったのです!

日々の介護で疲れていたTさん一家、せっかくのご褒美だということで、Gさんを一時的に施設に預け、1週間のハワイ旅行に繰り出しました。その後Tさんは欲しかった新車を買い、残りは大学から海外留学したがっていたMさんの進学費用に充てました。

 

その後Gさんは、一時で滞在した施設が肌に合っていたようで、しかもその施設に空きがあり、そのままそこに入所することが出来ました。

 

と、めでたしめでたし、となっては意味がありません。

本題はここからです。

 

Gさんが施設に入所することになったころから突然羽振りが良くなった兄夫婦の一家を、冷ややかな目で見ていた人がいます。

そうです。弟Oさんのお嫁さん、Yさんです。

 

Yさんはある夜、Oさんに言います。

「ねえねえ、お義兄さん一家、なんだか急に派手にお金使ってない?ハワイに行って来たかと思えばお義兄さんは新車を買うし、Mちゃんだって今度海外に留学するって。そういえばお義姉さん、ハワイから帰って来てお土産届けに来てくれたとき、見たことのないダイヤの指輪してたわ・・・(もしかしたら、お義父さんを施設に入れる時にお義父さんの株とか定期預金とか解約して、ついでに自分たちも恩恵にあずかってるんじゃないかしら)」

 

要は、Yさんは、義兄一家が施設に入った義父の財産を良いように浪費し始めてるんじゃない?つまり、将来のアナタ(Oさんの)相続の取り分が減るんじゃない?ということを、遠回しに言っているのです。

 

そういわれると、仲良く育って来た兄とはいえ、少し疑念を持ってしまうのも人間というものです。

別にOさんが悪人という訳でも、Yさんが嫌な嫁という訳でもありません。そういうふうに勘ぐるように出来ているのが人間なのです。誰もがそう思って、不思議のないことなのです。

 

この場合はまだGさんがご健在ですから、この弟一家の疑念や疑惑に基づく不満が噴出することはありません。

しかし、いざ、となった時、Oさんは、兄夫婦がGさんの財産を使い込んだ、と言いかねないのは明らかです。

はい、相続は一瞬にして争族を生み出すのです。

 

では、Tさん夫婦はどうすれば良かったのでしょうか。

そうです。GさんとTさん一家の財産を明確に分けて管理しておけば良かったのです。

家庭内では分けて管理していても、外部からそれは明らかではありません。

弟たちが、「父さんの財産なんだけど、どうなってるの?」なんてことは聞きにくいでしょうし、Tさんたちもわざわざ弟に自分たちの財産はこうで、父さんの財産はこうで、なんて開示するのが普通とは思えません。

 

そこで有効なのが、成年後見の制度なのです。

Gさんに成年後見人が就いていれば、Gさんの財産は成年後見人が全て預かることになります。

成年後見人は、年に一度家庭裁判所に被成年後見人(Gさん)の財産の状況を報告しますので、いわば公に財産が管理されているのと同じような状態になります。

もちろん、一緒に暮らしているTさんでも、Gさんの財産を勝手に触ることは出来ません。

Gさん自身でさえ、自分の財産でも自由に処分出来なくなるのですから、当然です。

Gさんの財産は、あくまでもGさん自身の豊かで有意義な生活のために、公的に管理された成年後見人によって使われて行くことになります。

 

こうやって、被成年後見人であるGさんの財産だけでも明確にTさん一家から区分けされておけば、Tさんたちは、弟夫婦からあらぬ疑いをもたれずにすむのです。

Gさんについて成年後見を申し立てる時に、Tさん、Oさんが充分に話し合って、一緒に申し立てればなおさら公明正大で、後に禍根を残さずに済むでしょう。

 

そういう訳で、たとえ家族がそばに居て面倒を見ている高齢者でも、そしてその方には巨万の富などなくても、その人の財産はその人の財産として適正に使ってもらうために、成年後見の制度を使うことはとても有効なことです。

そしてそれが、後の相続のもめ事を回避することにもつながります。

 

私はTさん一家のように、家族総出でお世話してきたおじいちゃんを見送った後、弟夫婦のイチャモンを防ぐべく、相続放棄をした人たちを知っています。

友人が先の話のMさん(孫)の立場にある人だったのですが、友人の母(先の事例で言えばKさん)は血のつながらない義父の世話に、毎日毎日真夏も真冬も自転車で片道1時間近くの距離を義父の自宅まで往復し、面倒を見ていました。その時弟夫婦は一切何もしませんでした。手を貸すことももちろんしませんでしたし、費用を一部負担する、ということもしませんでした。

しかし、弟夫婦は言って来たそうです。財産使い込んでるんじゃないか、と。

私の友人は「何もしない奴らに限ってそういうこと言って来て、ほんと、頭に来る!」と怒り狂っていましたが、友人の父(Tさん)は、弟ともめたくないし、別に俺は財産などいらん、と、さっさと相続放棄してしまいました。実際に面倒をみてきた友人の母親であるKさんは、相続人ではないですし、何か言える立場にはないのですが、本当はどう思っていたのでしょうか。友人曰く、怒り狂っていたのは友人だけで、両親は淡々としたものだった、とのことでした。怒りの感情を忘れる程、嫌な思いに耐えていたのかもしれません。

 

成年後見の制度は、本来は認知症や障害により、自らの財産管理に不都合のある人に代わってその財産管理や事務を行うために設けられたものです。しかし同時に公明正大に財産管理が行われることで、同居の家族のお金から被後見人の財産が切り離されることで、将来の相続財産の管理が明確になり、結果的に争族を生み出すことを防ぐことにもなります。

 

へえ~そんな制度があるんだ~、どうやって申し込めばいいの?という方は、当施設までご相談ください。手続寿留子が、簡単な概要でしたらご説明いたします。申立てが必要な場合に、適宜弁護士におつなぎすることも可能です。

お気軽にどうぞ!!