理事長ブログ

後見人3部作、その1 周辺関係者(??)コラム 

こんにちは。行政書士の(てつづきするこ・もちろん仮名)です。
行政書士をしながら弁護士事務所に勤務しておりますので、高齢の方々に関する法的トラブル、いろいろ垣間見てます。『寿留子は見た』ではないですが、実際にあったお困り事例、そのうちお話しできる範囲でご紹介してみようかと考えてます。
というわけで今日は、お困り事例を語る際に必須の、お年寄りの方々に関わる法的な制度や用語をご説明いたします。ざっくり必要最小限の基礎的なところだけお話ししますので、おつきあいくださいませ。

■後見にまつわる三部作

成年後見、お聞きになったことおありでしょうか。
なんとなーく、テレビでみたことあるかしら、という程度の方がほとんどではないでしょうか。

成年後見とは、認知症などで判断能力が著しく衰えた人について、その人に代わって財産を管理し、生活を守るために行う手続です。成年後見が必要になった人の事を、「被成年後見人」と呼びます。(言葉が分かりにくくて恐縮です。ただ、ここは慣れてしまった方がいいので、最初少しとっつきにくいかもしれませんが、あえてこのまま行きます。なあに、すぐに慣れますよ。ちょっぴりがんばりましょう。)

後見される人(高齢者の方や障害をお持ちの方)=被成年後見人
後見する人(家族や弁護士、社会福祉士など) = 成年後見人

ということです。
被成年後見人(高齢者など)に後見人(弁護士など)をつけるには、家庭裁判所に「成年後見開始の審判」というのを申立てる必要があります。成年後見が開始されると、被後見人は自分のお金なのに自由に使えなくなります。逆に、後見人は他人の大事な財産を預かることになります。こんな重要なことが簡単に、そして好き勝手に出来てしまったら大変です。
ですので、家庭裁判所に「この人について、後見を開始したいのですがいいですか」とお伺いを立てて、裁判所が医者の診断書などいろんな資料を見て判断し、時には高齢者ご本人と面談した上で「後見人を付けた方がよさそうですね」ということになれば「後見開始の審判」が出されます。
後見が開始すると、法務局に登記されて、被後見人は財産等の処分や事業の実施について、かなりの制約を受けることになります。今は制度が変わりましたが、前は選挙権すら剥奪されてたんですよ。それはあまりに行きすぎ、ということで今は変わりましたが、人権の中の中核といえる権利が制限されていたというのは、酷い話ですよね。

さて、成年後見開始の審判がおりたら、早速後見が始まります。
被成年後見人のために必要な仕事は、主に「財産管理(法律行為)」+「身上監護(事実行為)」からなります。
財産管理は、ずばり、お金・株・不動産などなど、その人の財産すべてを預かり、管理する仕事です。認知症などで「意思能力がない」状態の人は、有効な法律行為をすることが出来ません。法律行為とは、契約や贈与のことです。ですので、有効に被成年後見人の財産を管理し使い守るために、成年後見人が必要になるのです。
身上監護は、まさしく日々の介護事業所でのお世話や、必要な医療行為を施したりすることを指します。

成年後見人が行うのは、あくまでも「財産管理(法律行為)」の部分です。施設に入るために自宅を売ってお金を作って、施設の入所契約をする、とか、そういう感じです。
日々の入浴のお世話だとか、具合が悪いときに病院に連れて行くだとか、そういった「身上監護」はプロや親族にお任せします。後見人が、実際の介護を行うわけではありません。また、手術が必要なときなどに、後見人が「同意」をすることもありません。そのようなことは、あくまでも親族の方が行います。
一言で行ってしまえば、後見人はその人専用の単なる「金庫番」であり、基本的には財産管理以外、出来ないのです。

なによ、そんなの要らないわよ、お義父さんの財産なら私がみるわよ、と思ったそこのアナタ、甘いです。それでは足をすくわれかねませんよ~~。
世の中には無駄なこともいっぱいありますが、さすがに頭のいい官僚たちが国の財産を使って法律まで作って、無駄な制度を作るなんてことはしません。制度として洗練されているかどうかはともかく、法的に必要だからあるんです。
なんで甘いか、なんでこんな制度があるのか。続きは次回にお話ししましょう。