理事長ブログ

わが国財政のマクロ事情

まずわが国の社会保障費のおさらいです。社会保障費の総額は2016年予算ベースで、118兆円です。国家予算が100兆円弱ですから、それを超える規模になります。ところで、社会保障費というのは、大きく分けて2つあります。長期的に収支をあわせていく、将来の生活に備える年金と、単年度で清算し収支をあわせる医療費、介護費等の2つです。
118兆円の財源はと申しますと、66兆円が保険料収入、税負担(国税、地方税あわせ)45兆円がその財源になります。

さて、ここで118兆円をわが国の人口で割ると、およそ100万円、これが一人当たりの社会保障負担です。これ以外にも公共工事や防衛費などに使われます、一般的に国民一人当たり収入の40%程度が税や社会保障に使われているといわれて言います。興味がある方は財務省や厚生労働省、内閣府などのホームページを見ていただければ詳しいデータがございます。

内閣府
http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/reform/wg1/280915/shiryou3-1.pdf

これがある断面で切り取ったわが国財政の状況です。ここから時間軸を入れてみたいと思います。まず人口ですが減少しています。2010年ころから減少傾向にあるようです。一方で高齢化です。現時点で27%ご承知のとおり2035年には33%を超え、三人に一人が高齢者となり高齢化が進むことが見込まれています。

内閣府
http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2012/zenbun/s1_1_1_02.html
総務省
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01toukei03_01000053.html

ここで、風が吹けば桶屋が儲かる的な論法でいえば、高齢化⇒社会保障費の増加、人口の減少⇒一人当たり社会保障負担の増加、ということになります。ひらたく言えば、支出は増えるけど、収入は減少(現在の負担率であれば)する、ということになります。ではどうするかといえば、支出を減らし、収入を増加させるしかないわけです。支出を減らすのは、年金であれば、支給開始年齢を上げることと、支出額を減らすこと、医療費介護費等であれば、とにかく削減させるしかない。逆に収入を増やすのは負担率(※1)を上げるしかないわけです。

あんまり明るくない将来ですが、数字なので、間違いようがなく、時間の問題なんですね。とはいえこの明らかな前提のもとで、何ができるのか、を考えるしかないのです。高齢化が進むから、介護事業はラッキー!と能天気に考えている経営者はいないとは思いますが、これからは自分で出来ることは自分でやれ的な社会になろうかと思います。つまり介護給付は削減される方向、その中で地域にいかに貢献できるかを考える必要があるかと思います。

※1<国民負担率について>
ワタシたちは日ごろ支払う税金と、社会保険料などの社会保障関連費用(※2)をあわせると、収入の43%が国庫に徴収されている、というのが2016年度の推計値です。
http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/241a.htm

国際的な比較では、フランスでは67%の負担ということで、アメリカの32%よりは高いですが、フランスなどの国に比較すれば低い、という水準です。
http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/020.htm

※2<健康保険の累進性>
一般的に保険の仕組みというのは、リスクの低い人は安く、リスクの高い人は高い保険料を払うのがいわゆる保険の仕組み、つまりこの保険の基本で考えると、健康保険は保険を使わない健康な人であれば、保険料は安く、一方不摂生などで健康状態がよくない人であれば保険料が高い、というたてつけが自然。しかしわが国の健康保険料は収入にスライドしています。このロジックで考えると、収入の多い人が健康へのリスクが高い、という理論になります。ここが健康保険の税金化といわれるところで、保険、といいながら、所得の高い人から所得の低い人への所得移転を行っていることに由来します。

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