介護業界の産業構造について
本日は介護事業の産業構造についてです。まず施設系と在宅系の分類、施設系は特別養護老人ホームやサービス付き高齢者住宅やグループホームなど、一方の在宅系は通所介護(デイサービス)や訪問介護など。運営法人の分類でいえば、社会福祉法人とそれ以外、特別養護老人ホームは社会福祉法人以外経営することは出来ません。以前のコラムで書きましたが、「高齢者と住まい その2」 社会福祉法人は補助金や各種租税債務が免除されているなど、優遇されているということを述べたと思います。それを踏まえて、産業構造のヒエラルキーはこのようになります。
<KING>★★★社会福祉法人
↑
<大企業>★★施設系経営会社(株式会社等)
↑
<零細企業>★通所系経営会社(株式会社等)
これ、やじるしが上に行くほどヒエラルキーの上にいる、と思ってください。社会福祉法人は特別に国から認可を受けた法人です。誰でも社会福祉法人格を取得することができません。現在では新設はほとんど不可能と思ってください。その限定的(全国約2万社)な社会福祉法人しか経営できないのが特別養護老人ホーム、正式には介護老人福祉施設です。設立時1床あたり300万円以上の補助金が投入され、その後租税債務が免除されます。この条件で競争して勝てないほうがおかしいということで、社会福祉法人が介護事業の頂点に君臨します。ただし、補助金が投入されているため、行政からの注文があれこれつくので、経営の自由度は多少劣るかもしれません。
次に施設系です。施設は自分で持つケースと大家さんから賃借を受けるケースがあります。以前のコラムで書きましたが、30名の施設でも4億円弱の資金が必要になるため、自社で建設するにしても、大家さんが賃借するにしても、信用力がない事業者には運営できないのがほとんど、運営企業の規模は当然に大きい。大手企業が新規事業として介護に参入しようとすると、おおよそここから始まります。
最後に通所系です。これは小資金で開始できることがポイント、小規模デイサービスであれば1千万円程度でのスタートできます。参入は容易なので、有象無象(私たちも通所系なのですが、、、、)がたくさんいる、当然に企業の規模は小さいところが多いのが実態です。
このヒエラルキーを駆け上がるには相当なハードルがあります。まず通所系が施設系に格上げすることを想定すると、仮に4億円の施設を作ろうとした場合、総事業費の約3割を自己負担することが最低条件、とすれば、1億2千万円の手金を用意する必要があります。また、賃借する場合、4億円の年間想定賃料は約4千万円、賃借の際は保証金を入れる必要がありますので、これ6か月分が必要としたら2千万円が必要になります。さらに什器備品と運転資金が必要となると、、、、小規模デイサービスで年間5百万円程度の収益があったとして、6-7年がんばって借りれるかも、自分で作るとなると、20-30年くらいかかるかも、という感じでしょうか。高いハードルです。
次に施設系が社会福祉法人へ参入、これ、そもそもほぼ新設不可能ですので、事実上ムリです。また、出来たとしても、社会福祉法人を法人が経営することは出来ません。実質上法人が所有している社会福祉法人もありますが、社会福祉法人というのは、そもそも非営利団体なので、配当ができません。つまり、法人のグループ経営に不向き(法人グループに利益還元ができない、という意味で)なのです。よって社会福祉法人を経営するインセンティブがない、ということが言えると思います。
ということで、こういうことがいえます。
①通所系は将来戦略として、時間をかけて施設系に行くか、あるいは同じ業態で多店舗展開するか、異業種に参入するかしかない。
②施設系は多店舗展開するしかない(通所系は規模が小さいため取り組むインセンティブがない)
③社会福祉法人はまったりとする。
最後がなぞですが、社会福祉法人って、大きくなるインセンティブないんですよね。。。配当できるわけでなし、役員報酬をがっぽりとれるわけでもなく。ということで、本日は介護事業の産業構造でした。
【関連ページ】