高齢者と住まい その3
過去2回のコラムで高齢者の住まいの問題点を2つ提起しました。
一つ目は、高齢者が住宅を賃貸しようとすると、①保証人、身元引受人が必要で、②孤独死のリスクを大家が嫌う傾向にあり、簡単に借りることができない、という問題
二つ目は、高齢者専用住宅を作ると、制度的に安価に提供することができない、という問題
これからの超高齢化社会において、高齢者の住まいに問題あり、という結論になりました。問題をそのままにして先にすすめませんので、筆者の考える解決策を述べたいと思います。
順不同で、まずは高齢者住宅を安価に提供する方法です。色々な方法がありますが、極端に下げる方法は、既存の住宅インフラを使う、ことだと思います。既存の住宅インフラとは、ずはり、空家です。
2013年総務省の統計によれば全国の空家率は820万戸、全戸数の13.5%となっているようです。松戸市でも、住宅地を歩けば、空き家をちらほら見かけますよね。
既存の空き家を利用すれば、なぜ賃料を下げることができるのか。投資家の資金の回収は次のような構造になっています。
①固定費の回収
②変動費の回収
③利益
①固定費の回収は、投資した建物の回収費用です
②変動費の回収とは、修繕費や固定資産税などの費用です
③物件賃貸にともなう収益
つまり、3階建ての構造になっています。ここで、わかるとおり、既存の空家は①固定費の回収が必要ありません。古い建物ですので、最低限のバリアフリー化をして、貸し出すことができれば、コスト面では十分に安価に提供することが出来るかと思います。
一方で、これ、いわゆる行政の制度の枠にはまらない物件になります。ここが難しいところで、一歩間違うと、無届け老人ホームになってしまいます。
しかし、行政とうまく折り合いをつけて運営しているところもあります。
墨田区にNPO法人ふるさとの会という組織があります。
http://www.hurusatonokai.jp/
支援付き住宅、というものを推進しており、既存の建物を利用し、安価で住まいを提供しています。
ここは厚生労働省のモデル事業として取り上げられたり、行政側とうまく折り合いをつけています。こないだ筆者がこのNPOの講演会に行った際、厚労省の元老健局長が講演していました。すごいですよね。
ここで地域のソーシャルワークに携わる皆様にお聞きしたい。行政とどのように関係を構築すればよいか、ということを。
たとえば、ふるさとの会と同じ事業を行いたい旨、市や県に相談したらどういう反応になるか。行政は老人施設の枠の中に入れたいとすれば、廊下幅をとれ、不燃材を使え、非常用設備をつけろなどなど、結果、新築同様かそれ以上のコストがかかってしまいます。
一方で、行政にだまってこれを推進したら、、、無届け老人ホームといいだしませんか?
卵が先か、鶏が先か安価に住まいを提供する、ということを考えると既存の住宅インフラを使うほかない、と筆者は考えています。しかし、これを地域で展開するとなると、このような問題がある、ということをまずは皆様とシェアして、今回は終わりたいと思います。
今回のコラムは社会福祉士で金融機関で高齢者住宅向け融資業務を担当していた本NPO副理事長が担当いたしました。今後も、高齢化社会で直面する問題について、知っておきたい豆知識をコラムとしてご提供しようと思います。ソーシャルワークの一助になれば幸いです。
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